代表あいさつ
南遊の会代表の藤本と申します。南遊の会は正式には2001年に発足した,まだ新しいNGOです。私は初代代表で創始者でもある石丸 龍氏の後を引き継ぎ,2004年7月から代表を務めております。
南遊の会の活動目的は,日本とベトナムの協働作業によるマングローブ林保全事業を通して地域環境や地球環境の保全に貢献すること,また,両国の若者に環境保全の大切さと自分たちとは異なった文化や考え方があることを学ぶ機会を提供し,相互理解と友好を深めることにあります。「南遊」には「南,つまりベトナムから学ぶ」という意味が込められています。その目的を実現するために,ホーチミン市農業農村発展局,カンザーマングローブ保護林管理委員会(以後森林組合と呼ぶ),および両国の大学と連携し,2002年度から毎年8月に両国の若者によるマングローブ植林を中心としたスタディツアーを実施し,「日越青少年交流の森」と命名された50haの森林再生事業に取り組んでいます。
カンザー地区はベトナム戦争時の米軍による枯葉剤散布でマングローブ林が多大な被害を被った地域です。現地では戦中・戦後から,その荒廃した土地に積極的に植林を進め,ほとんどの被害地を緑が覆うほどに回復させましたが,一部地域では立地条件に適さない樹種が植林されたため,未だ十分な植生回復が見られない状態にあります。私たちの活動は,そのような土地を本来の多様性に富んだ生態系に回復させるための事業に協力するものです。
当初契約の50haの再植林事業は,JICA「草の根技術協力事業」(2004年8月~2007年7月)としての支援も受け,2006年11月に完了することができました。2007年3月には現地森林組合と3年間かけてメンテナンス作業(ニッパの下刈りや補植など)を実施する第2期事業契約を結びました。2003,2004年には苗の成長過程をモニタリングするための固定プロットを設置し,毎年生育調査も実施しています。
スタディツアーには,日本側は主として公募に応募した大学生(社会人や高校生も参加可),ベトナム側はホーチミン市のホンバン大学日本語学科および国立農林大学林学科の学生・院生が参加します。現場作業は3日間,しかも午前中しか行いませんが,時には激しいスコールや炎天下での作業となり,このような作業を初めて経験する学生たちにとっては例年2ha程度の作業が精一杯です。参加者たちは,この体験を通して,自然を破壊することはたやすいけれど,その再生がいかに大変かということに気付くことになります。また,その間両国の若者が寝食を共にし,協同で作業を行うことで,お互いの理解も深まります。スタディツアー終了後には毎年感想文集を作成します。この感想文集をご覧いただければ,参加した学生たちがこの活動を通して何を学び,何を考えたのかを知ることができるでしょう。そして,私たちの活動に興味を持っていただけましたら,是非スタディツアーへの参加を検討してみてください。
皆様方の積極的な参加をお待ちしております。
南遊の会代表 藤 本 潔 (南山大学総合政策学部教授)